ニコロビンプレゼンツ茂木健一郎さんからのメッセージ『
創造性において「イースターエッグ」を仕込むためには、がまんする時間が必要である。「遅延満足」(delayed gratification)のパターンを自分の中に育てなければならないのだ。
「遅延満足」が子どもの中でどのように発達するかを実験したのが有名なマシュマロ・テストである。スタンフォード大学の研究者で行われたこの実験は、子どもが大好きなマシュマロをがまんできるかを見た。このがまんと、その後の人生の成功の間に相関があった。
創造する者は、このようなマシュマロ・テストを自らに課さなければならない。長い間、誰にも見られず、褒められず黙々と努力して、結果としての満足は、ずっと後に(与えられるとしたら)得られるという時系列を自分のものにしなければならない。
もっとも、創造が成功するかどうかはわからないし、世間の反応もあらかじめ読めない。だから、「遅延満足」は、決して保証されているわけではない。それでも努力を続けられる人ではないと、創造することはできない。
ちょっとした慰めはある。「遅延満足」のスキームのもとで、褒められも認知もされずに作業を続けている間でも、チクセントミハイの「フロー」のメカニズムを通して、行為自体が報酬になるということはある。フローは、遅延満足を補足するのだ。
「フロー」を通して、行為自体が報酬、よろこびになれば、「遅延満足」はボーナスになって必須ではなくなる。ここまでくれば、その人は創造者としての自転車こぎの技術をみにつけたと評価できるだろう。』