人工知能の最も興味深い問題は、それが、先を見ずにはいられないという人間の生命の業のようなものの果実だということだろう。チューリング機械を考え、トランジスタを発明し、人工知能を開発せずにはいられない人間という生命のあり方がきわめて面白い。
アルファ碁とイ・セドルの対決に見られるように、自分たちのベスト・アンド・ブライテストを破る人工知能をつくることに情熱を傾ける人間は、「知性」ということを超えたsapere aude (dare to know)の暗い衝動にかられているように見える。
以上のようなことがあるから、ハサビスと羽生さんが向き合ったときに、ああ、二人は生きているんだなあ、という感覚をもったことが、昨日の番組の一つのクライマックスだったのだと思う。』