ニコロビンプレゼンツ
茂木健一郎さんからのメッセージ『最近の
人工知能の発展は、つまり、
ムーアの法則によって高機能化したCPUによって、従来の学習則を特定の文脈(例えば
囲碁とか、自動運転とか)に当てはめた時に、評価関数を最適化することが可能になったということに基づく。
ディープラーニングが喧伝されているが、学習則自体に画期的な新しい発展があったわけではなく、あくまでも文脈が特定された中での最適化が、より深く強くできるようになったということに過ぎない。しかし、それは十分に驚異なことである。
なぜ、
人工知能の時代に人間の人格が重要になるのか。人格とは、つまりは、人生のさまざまな課題に対する、資源の配分の癖のようなものである。仕事ばかりの人もいれば、5時から男、みたいな人もいるだろう。そこにその人らしさが表れる。
人工知能ならば、例えば将棋という一つの課題を与えられたら、その文脈で、100時間でも1000時間でも連続して集中するだろう。人間はそうは行かない。将棋への集中以外にも、解くべき人生の課題があるからだ。
将棋の
棋士は、盤面に集中するだけでなく、ごはんも食べるし、社交もあるし、恋も、家庭も、子育ても、さまざまな
複数の文脈にまたがる課題を解かねばならず、そこにおける資源の最適配分は自明ではない。
それぞれの人の人生を、
複数の課題にどのような資源配分をするかという問題として考えた場合、正解は一つではないし、その配分の仕方にその人らしさ、人格が表れるのであって、それは、
人工知能の問題ではない。少なくともかなりの長期間の当分は。』