ニコロビンプレゼンツ茂木健一郎さんからのメッセージ『
『シン・ゴジラ』には、最近の出来事の反映として、筋道をつけやすいように見えるいくつかのポイントがあるが、悪夢は、そのようなことを「釣り針」としつつ、深海に潜む、得たいの知れない、名前もわからない「魚」を釣り上げる。
その「魚」が、人生という甲板の上でぴちぴちと飛び跳ねている様子を、私たちは半ば畏れて、半ば魅了されて眺めるのだ。
「魚」は、すべての感触を変える。
長いながい会議のシーンは、私たちの知る現実の日本の一面ではあるが、それは同時に、どこか絵空事風の、初めて観る惑星の光景のような清新さがある。
悪夢は、私たちが慣れ親しんだように思い込んでいる現実の表面をこすりとって、 その内側から、ピカピカの実在の光を探り当てる。
その光を照らしてみないと、私たちは現実をどうにももうわからない、そんな存在になってしまっているのだ。
ゴジラの背びれから放射されるビームは、そんな光だ。
私は、庵野秀明さんが生み出した「悪夢」が好きだった。
しばらく浸って、戻ってきた現実は、今までよりもちょっとほろ苦く、しかしわくわくするものになっていたように思う。