パーティーで宗教と政治の話をしてはいけない、と言うが、どちらも、人が頑なになりがちなテーマである。ユーモアで視点を相対化することができれば、やわらかな眼で、現象を見ることができる。笑いが排除されると、極端に走る。
チャップリンが『独裁者』をつくった1940年は、ドイツでナチスの勢いが盛んだったときであり、その時にヒトラーの硬直したスタンスを笑いでつついたチャップリンの天才と勇気は称賛に値する。その後の世界は、まだどうなるかわからなかった。
差別や偏見の問題も、笑いにするのがよい。その際、どうしてもタブーは出てくるが、それを少しずつ突き破っていくのが、コメディアンの勇気であろう。もちろん、笑えなければ仕方がないが、なにが笑えるかというボーダーは、時代とともに変わる。
世界が混迷を深め、対立が先鋭化し、さまざまな差別や偏見にとらわれるひとが増えている今こそ、タブーなき笑いが必要だと感じる。すべてのコメディアンに花束を。タブーなき笑いにこもれびを。』