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朝からメッセージ

ニコロビンプレゼンツ茂木健一郎さんからのメッセージ『   f:id:barussnn127:20150526070541j:imageぼくの小説はどこで切ってもいいと保坂和志さんはかつて言った

数年間担当していた東京藝大の私の授業には、さまざまな方が来てくださったが、そのうちの一人が保坂和志さんだった。保坂さんには、いろいろなお話をうかがって、凄い人だと思っていたが、特にある一つの発言が、ずっと心に残って忘れられない。

保坂和志さんが、小説家デビューした頃のこと、ある作品が、文芸誌に載るときに、ちょっと長すぎた。それで、編集者が、文字数を減らせないか、と打診したところ、保坂さんは、「ああ、いいですよ。どこでも、好きなところで切ってください」と言ったというのだ。

このエピソードは、つまり、保坂和志さんのその作品(その特定の作品だけでなく、保坂さんの作品すべてに言えることかもしれないが)は、どこで切っても成立する構造を持っているということを示しており、一つの見切り方、達人的視点がそこにはあるなと感じた。

考えてみれば、人生は、起承転結なんか考えてくれない。私たちの日常の時間は、つねにぶった切られている。友人との会話だって、「あっ、時間来たわ、いくわ!」と途中で終わることがある。人生そのものも、いつ、エンドになるか、わかりはしない。メメント・モリ

物語の起承転結なんか気にしないで流れているのが、生命の時間というもので、だからこそ私たちは物語を立ち上げて、切ない仮想の中に憩うわけだが、「ぼくの小説はどこで切ってもいい」と編集者に言った時の保坂和志さんは、一人の卓越した生命哲学者だったんだなあと思う。』