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朝からメッセージ

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ニコロビンプレゼンツ茂木健一郎さんからのメッセージ『  

小津安二郎の『東京物語』は、英国の映画関係者の投票で、世界の映画史上1位に選ばれた名作である。尾道から出てくる老父母が、東京の子どもたちとすれ違い、諦念のまま帰り、母親が亡くなる。ごく当たり前の家族のあり方を描いて、底光りする感動がある。

小津安二郎の『東京物語』、『麦秋』、『晩春』、『秋刀魚の味』といった作品群が、いかにも日本的な家族のあり方を描きながら、結果として、世界中の人たちの心をとらえ、特に、プロの映画人に神品として評価されているのは、一つの奇跡と言えるだろう。

文化は、表層こそ違うけれども、その奥底には、同じ、人間のモティーフが流れている。逆に言えば、すぐれた作品は、表面の違いを超えて、共有の深層にまで降りていって、そこで接続する。だからこそ、言葉や習慣の違いを超えて、つながっていく。

つまり、横に行くのではなく、深く降りていくことが大切なのである。村上春樹さんがしばしば用いるメタファーで言えば、井戸を掘り下げていくのである。そうすると、足元から、思わぬ清冽な水が湧きだしてくる。その水は、人間の普遍に通じる。

グローバル化と言っても、横につながるだけでなく、自分の足元を掘り下げていくことが大切なのは、言うまでもない。それがないと、結局、浮ついた、つまらないものが大量生産されることになってしまう。

ところで、小津安二郎は、第二次大戦中シンガポールで捕虜になり、その間、アメリカの映画を大量に見たのだった。戦後の小津のいかにも日本的傑作群の前に、小津の大量のアメリカ映画体験があったことは、とても興味深い。』