法的には、高層マンションがつくれるのに、イギリス人が、結局、高層マンションを選ばなかった、というのである。昔からある建物に、修理しながら住む方が好きで、そっちを選んだというのである。私は、へえと思った。
昨日、森達也さんとお話したとき、ドキュメンタリー映画の難しさを聞いた。日本にはあまり市場がないのだという。最新作FAKEは素晴らしいが、ヒットしてもこれくらいだろう、と数字を聞いて、えっ、そんなもの? と思った。
森達也さんが比較されることが多いだろうと思うアメリカのマイケル・ムーアさんはどうなのか、と聞いたら、アメリカはぜんぜん市場が違うのだという。全世界がねらえる、ということもあるけど、そもそも国内市場が違う。
市場が作品をつくるのか、作品が市場をつくるのか。一つ確実に言えることは、市場におけるメジャーな線ばかり狙っていると、内容がつまらなくなるということだ。かといって、ある程度ヒットしないと、生活が成り立たない。
少なくとも、自分が読むもの、聴くもの、見るものは、市場とは無関係に、自分の好きなもの、愛するもので構成するのがいいのではないか。そして、仕事は、市場と妥協する。あるいは、市場と一緒にタンゴを踊る。そのようにして、少しずつ生きていくしかない。』