さらには、台頭する中国と、それに比しての日本の国際的地位の低下がある。少子高齢化、経済の停滞など、日本の将来を不安にさせる要因がたくさんあったために、mortality salienceのメカニズムによって保守化した。9・11テロの後、アメリカが保守化したのと同じ理由である。
このような状況の下で、安倍内閣は支持を集めてきた。デフレ対策を大胆に打ち出したアベノミクスは、経済や国の先行きに不安を持っていた日本人に、まさに打ってつけの政策だった。東日本大震災や、日本の国力の停滞といった不安な状況を、安倍さんの経済政策が打破するという期待が集まったのだ。
日本の保守化の傾向と、首相の強い指導力によって支えられてきた安倍内閣の支持率が、低下し始めている。その理由は、保守化をもたらしたのと同じ、不安であろう。現在進められている安保法制は、日本の不安を解消する方向というよりは、むしろもっと不安にさせる結果になりかねない。
地域的限定なしに、どこでも日本が後方支援活動をする。多くの識者が指摘しているように、前線と後方支援の区別など、戦争状態になればない。さらに、日本自体がテロなどに巻き込まれるリスクも、より強まる。つまり、憲法論議を抜きにしても、安保法制は日本人をより不安にさせる政策である。
震災と国力低下によって引き起こされた日本人の不安を、ある程度解消することに安倍さんは成功してきた。ところが、安保法制は、その日本人をより不安にさせる政策である。国会会期の大幅延長でどうしても通すという意向のようだが、以上の理由で、内閣支持率のさらなる低下は避けられないだろう。