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いきなりメッセージ

ニコ・ロビンプレゼンツ茂木健一郎さんからのメッセージ❗️『「弁当箱プリン」と「芋粥

人生の中で、「こんなこといいな」と思っている夢がある。それが実現したとき、案外がっかりする、ということは実際にある。子どもの頃、プリンは家でつくるものだった。好きだったので、大きなプリンを食べてみたいな、と常々思っていた。そしたら、ある日、母親が弁当箱でつくってくれた。

「弁当箱プリン」を実際に食べてみたら、ぜんぜんよくなかった。さいしょの方は普通においしかったのだけれども、だんだん飽きてきて、そのうち、もういいやと思ってしまった。子どもごころに悲しかった。それから、ぼくの人生の中からは、「大きなプリンが食べてみたい」という夢が消えた。

こう書くと、芥川龍之介の『芋粥』を思い出すひとも多いだろう。何かを、心ゆくまでたべてみたい、という夢は、たいていの場合、現実化すると案外色あせてしまうものではないか。「こんなこといいな」と思っているうちが花で、その楽しみは、実現しない仮想の中にこそあるのである。

人生で私たちが抱く「夢」の中には、「弁当箱プリン」や「芋粥」のようなものがあって、実際にそこに行ってみると(達成されてしまうと)案外つまらない。ところが、そのような夢が、私たちの人生の原動力になってしまっているという事実もある。夢は、私たちの前にぶら下がった人参のようなものだ。

実現したら、想像以上にすばらしかった、という夢もある。バイロイトに行くのは長年の夢だったが、数年前、実現した。祝祭劇場は、思った以上に素晴らしかった。劇場の木材の質感が、荒削りで本質的だった。つくった人はほんとうに偉い。実現したら思った以上に素晴らしい夢こそが、人生の祝福だろう。』
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